今日は月一開催の戯曲会。
お題は、「天保十二年のシェイクスピア」の予定だったのだけれど、色々あり
急遽「お月様へようこそ」を読むことに。
抜粋して稽古をしたことはあったものの
全篇通して読むのは、はじめて。
パトリックシャンリーが後書に、6編の戯曲は掲載順に上演する事が好ましいとわざわざ記しているならば、きっと意味があるのだろう!とその通りに読み、時間があったので配役を変えたり、男女を入れ替えてみたり・・・と様々な試みで読んでみる。
すると、たった一度読んだだけでは見えてこなかった景色が広がり始めて、感嘆しながら喜びを分かち合う素敵な会になりました。
ほとんどの戯曲が2〜5人の少人数で構成される短編集なので、構成もシンプルだしわかりやすい。だからこそ、人を入れ替えてみる事で見えてくる変化が顕著で面白い。
こういう試みは、上演が前提の稽古や読み合わせではなかなか出来ないし、フラットに読む事すらも難しかったりするので、戯曲会ならではの時間だなぁ、なんて思いつつ・・・
「お月様へようこそ」はジョン・パトリック・シャンリーが1982年に発表した
・赤いコート
・どん底
・星降る夜に出掛けよう
・西部劇
・喜びの孤独な衝動
・お月様へようこそ
以上、六編からなる短編戯曲集。
私は、星降る夜に出掛けようがとても好きで、この作品を読みたい一心で今日の戯曲会のテーマに猛プッシュしました。
星降る〜の内容をざっくり説明すると、
友人と上辺の付き合いを繰り返すことにうんざりしている女が、ある日、バーで人形相手に言いたいことをぶちまけていたところ、ドストエフスキー似の男が目に入り、とてつもなく気になったので声をかけてみる。するとその男は大量の幽霊や妖怪に囲まれていてどうやら殻に閉じこもっている様子。それでもめげずにアタックを続けると、少し心を開いてくれそうな予感・・・ダッシュでこれまでの半端な友人付き合いに終止符をうち、男に日頃思っていることを打ち明ける女。正直に生きる、ということについて真剣に考える二人。やがて二人は、星降る夜に出掛けて行く・・・
という、なんとも不思議な物語。だけれども、彼らが語っている言葉は誰もが一度は感じたことのある繊細な瞬間をよく表していて、ロマンチックで切なくて、とにかく素敵なのです。
私のあらすじ説明じゃそれはきっと伝わらないな・・・笑
そして、掲載順に読んでみて気づいたこととしては
・人を愛する過程が、どんどん成熟していく。
(16才の少女と17才の少年が、初めて人を愛する という経験の素晴らしさに気づく瞬間の物語 → 貧しい生活と言論統制を強いられる詩人と恋人が、芸術家としての魂を守り抜こうと戦う物語 → 精神的栄養不足の女と幽霊に取り憑かれた孤独な男が正直に生きる事を真剣に考える物語 → 理想的なカウボーイを演じる男と自身の理想を投影した人を守って死んでいく少女の物語 → 人魚に恋する青年と、年相応の欲望を持つ友人の物語 → 愛してはいけない人を愛したばかりに苦悩する男たちの物語)
・星降る夜に出掛けよう の二人だけは役名が名前ではなく 男と女
→男女性の違いを描いているのかな?
・描かれている人たちはみんな、純粋すぎるが故に孤独な人ばかり・・・
美しい物語だよ。本当に。
刹那的な瞬間を沢山目撃できるのよね。
パトリックシャンリーの作品を順番に追いかけてみたくなりました。