最近読んだ本の中で印象的だった作品を3冊紹介します。
まず1冊目は、
ハリエット・アン・ジェイコブズ著
「ある奴隷少女に起こった出来事」(新潮文庫)
内容(「BOOK」データベースより)
好色な医師フリントの奴隷となった美少女、リンダ。卑劣な虐待に苦しむ彼女は決意した。自由を掴むため、他の白人男性の子を身篭ることを―。奴隷制の真実を知的な文章で綴った本書は、小説と誤認され一度は忘れ去られる。しかし126年後、実話と証明されるやいなや米国でベストセラーに。人間の残虐性に不屈の精神で抗い続け、現代を遙かに凌ぐ“格差”の闇を打ち破った究極の魂の物語。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ジェイコブズ,ハリエット・アン 1813‐1897。アメリカ合衆国ノースカロライナ州出身。幼くして両親と死に別れ、12歳で35歳年上の白人医師の家の奴隷となり性的虐待を受ける。苦難に満ちた自身の半生を記述した『ある奴隷少女に起こった出来事』が、刊行から約130年後のアメリカでベストセラーに
この作品は、アメリカ南部で奴隷として生を受けた著者ハリエット・アン・ジェイコブズの半生を描いた実話。
”奴隷と言う身分に生まれた者にとっては当然の光景”に強く疑問を持ち、自らの知性を武器に奴隷制度そのものと戦い抜いた一人の女性の心の内を、鮮明に追体験させてくれる情感のこもった言葉たちと、どこかフィクションなのかも知れないと思わせる選び抜かれた詩的な言葉たちのバランスがとても美しかった。
彼女が自身の貞操の危機を予感している場面では、どうかその日が訪れませんように!と心から祈る自分がいたし、それでも残酷に過ぎ行く時の中でいよいよ”その日”がやってきた絶望感と喪失感は計り知れない痛みを伴うのだろうと考えると、私自身の中にも痛みが走った。何よりも彼女が逃亡生活の中で最も過酷だったと語っている、立ち上がることもできない屋根裏での7年間の描写に関しては、追体験するのがあまりにも恐ろしくなり視点を変えて読んでしまった自分がいました。
『私にとっての善人は誰かにとっての悪人であり、私にとっての悪人は誰かにとっての善人である』というごく当たり前のことを再認識。そもそも人間が人間を所有するという価値観そのものが、あまりにも恐ろしいと感じつつ、形を変えているだけで、こういう感覚は今尚根強く残っているよなぁ・・・と感じて震えてしまった。
現代を生きる日本人には無縁かと問われると当然答えはNOだし、そもそも”人が人を所有する”という感覚は、人間が持ちうる欲望のうちで最も深い悦びや満足感を得られるものなのではないかと思うから根絶するなんて不可能だと思う。だからこそ、人間の根源的な欲求や恐怖からくる愚かな思考を抑制し共存していくために、倫理観や法律や信仰という概念が必要なんだなと、体感を超えて実感させられる作品でした。
少女よ!信念を持ち、強く生きよ!
私の中にまだ少し残る少女性に、真っ直ぐと語りかけられたような感覚。